| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-014 (Poster presentation)

次世代シーケンサーを用いた山岳氷河中樹木花粉のDNA分析

*松木悠(東北大院・農),中澤文男(極地研),陶山佳久(東北大院・農)

生物の分布や遺伝的多様性が, 過去から現在にかけてどのように変遷してきたか, またそれらの変遷に気候変動が与えた影響などについて近年多くの研究がされている. しかし, 対象生物の過去の遺伝的な情報を得る手段は限られており, 一般に統計的手法による推定がされることが多い. 一方, 中低緯度の山岳地帯に形成された氷河には, 風媒植物の花粉が含まれており, アイスコア(氷河の掘削によって得られる氷の円柱状試料)の花粉分析から過去の植生推定がされてきた. こういった氷河中花粉の中には, 原形質が確認できるほど保存状態の良い物もあり, 氷河中の花粉を用いた遺伝解析ができれば, 過去の遺伝情報を直接的に得られる可能性がある.

本研究では, ロシア・アルタイ山脈のベルーハ氷河において2002, 2003年に採取された雪氷試料中に含まれる花粉粒(花粉年代:1965, 2002年)を用い, 遺伝解析を試みた. 花粉粒からDNAを抽出し, 全ゲノムを増幅した後に, 発表者らが開発した次世代シーケンサー用ライブラリ作成法 (MIGseq-Multiplexed ISSR Genotyping by Sequencing)を用いてゲノムライブラリを作成し, 塩基配列を決定した. また, 花粉粒からDNAを抽出した後, MIGseqにより直接ゲノムライブラリを作成することも試みた. 本発表では, 本アプローチの有効性を確認するとともに, これらの氷河中花粉から得た遺伝情報を元に, 種同定, 多様性の評価等を行った結果を報告する.


日本生態学会