| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-021 (Poster presentation)

広腰亜目に属する科・亜科のホスト植物との関係と種多様性

*井坂友一, 佐藤利幸

約925,000種が記載されている昆虫類は,地球上で最も種多様性が高い分類群とされている.昆虫類の約半数を植食性昆虫が占めており,多様な植物-植食性昆虫の関係(例えば被食-捕食や相利共生)は種多様化の要因のひとつと考えられていることから,両者間の関係は地球上の種多様性を理解するうえで重要なモデルケースとされている.ハチ目は現在約120,000種記載されており,祖先的で側系統からなる広腰亜目(ハバチ類)と,子孫的で単系統からなる細腰亜目に大きく分けられる.ハバチ類は現在約8,500種が記載され,そのほとんどが植食性である.本研究では,ハバチ類データベース (ECatSym 4.0 beta) で公開されているハバチ類の種ごとのホスト植物の記録を収集し,ハバチ類の科ないし亜科ごとにホスト植物の情報をまとめ,ハバチ類とホスト植物の関係を明らかにした.具体的には (1) ハバチ類の各科・亜科の種数とそれらが利用するホスト植物の目数の関係と,(2) ハバチ類の各科・亜科の,ホスト植物の目レベルでの利用のパターンを示し,(3) ハバチ類の共通の祖先においてホスト植物とされた植物分類群の推定を行った.データベースの情報から,ハバチ類が8567種記載されていること,そのうち2087種のハバチ類にホスト植物の記録が存在することを確認した.また,ハバチ類のホスト植物として2125種の植物の記録があり,その大部分が被子植物であった.ハバチ類の各科・亜科における種数と,それらが利用するホスト植物の目数の間には正の相関がみられた.ハバチ類の各科・亜科は,被子植物の真正双子葉類,特にバラ目を中心とするいくつかの目をホスト植物として利用していたが,一部の科・亜科では特異的に裸子植物やシダ植物をホスト植物として利用していた.また,ハバチ類の共通の祖先においてホスト植物とされた分類群は裸子植物と被子植物の真正双子葉類であると推定された.


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