| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-030 (Poster presentation)

シミュレーションデータを用いたConvergent Cross Mapping の性能評価

*中山新一朗(中央水研), 市野川桃子(中央水研), 岡村寛(中央水研)

Convergent Cross Mapping(CCM)は生物的事象において一般的である非線形な力学系から生じる時系列データを対象とした因果関係推定法である。本発表では、北西太平洋におけるマイワシとカタクチイワシの魚種交替現象に注目し、これら2魚種の資源量や加入量、餌となる動物プランクトン、環境要因(海域ごと、季節ごとの海水温)の間の因果関係をCCMで網羅的に解析した結果について報告する。先行研究により、カリフォルニアにおいてはこれら2魚種の資源量動態が種間相互作用ではなく水温に影響されていることが示されたが、水温は海域によって異なる傾向を示すにもかかわらず魚種交替は世界中で同期することが知られている。そのため、北西太平洋でも魚種交替が水温によってもたらされているのかどうかは興味深い問題である。また水温が直接個体群動態に影響するのか、(餌などの)他の要因を介して影響するのかは不明である。解析の結果、(1)2魚種とも水温の影響を強く受ける、(2)魚種間、栄養段階間の相互作用は存在するが、水温の影響ほど大きくない、ことが明らかとなった。(1)の結果より、北西太平洋とカリフォルニアでは2魚種の水温に対する応答が異なることが示唆された。また、水温の2魚種の動態に対する影響は餌のそれより大きいこと、餌の影響が検出されなかった海域でも水温の影響は検出されたことなどから、水温は餌を介して2魚種の動態に影響するわけではないことが示唆された。


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