| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-047 (Poster presentation)

東日本大震災と岩礁貝類相の時空間変動

*栗原健夫,鈴木健吾,高見秀輝(水産総研セ),千葉晋(東京農大),佐々木猛智,清家弘治(東大),中井静子(日大),日向智大(三重大),上村了美(大阪市大),伊勢田真嗣(和歌山県),中野智之(京大),伊谷行(高知大)

目的: 東日本大震災が海洋生物相に与えた影響は、干潟、藻場、岩礁潮下帯などから報告されつつある。一方、岩礁潮間帯からの報告はまだ乏しい。岩礁潮間帯は、地盤沈下に伴う「新潮間帯」の形成と「旧潮間帯」の沈降という環境変化を経験した。この新・旧潮間帯において、どのような生物相が形成されつつあるのか?我々は、1970年代からの断続的な全国岩礁潮間帯の貝類相調査データをもとに、この問いに取り組む。

方法: 日本太平洋岸の19定点(うち、東北地方に3定点)の潮上帯~中潮帯に9個の0.25m2方形枠を置き、全貝類を同定・計数するという調査を、震災前(1978~2006年)に9回、震災後(2012~14年)に4回行った(最初の6回は環境省による)。震災後の東北地方では、新・旧潮間帯に9個ずつ方形枠を設置した(それぞれ「新方形枠」、「沈下方形枠」)。

結果: 震災後、東北地方の3定点において、沈下方形枠では低潮帯付近に特徴的な貝類相が見られ、新方形枠では潮上~中潮帯に特徴的な貝類相が見られるようになった。その結果、Czekanowski距離に基づくMDS平面上で、震災前の方形枠から見て、新方形枠はやや離れたクラスターを形成し、沈下方形枠はさらに離れたクラスターを形成した。これに並行して、東北地方の3定点で方形枠あたりの平均種数も震災前後で変化し、特に、震災前の方形枠に比べて沈下方形枠で種数が上昇していた。このような種組成や種数の震災前後での変動が東北地方の定点において見られたが、その変動幅は東北地方以外の海域での変動幅と近かった。


日本生態学会