| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-058 (Poster presentation)

樹洞において内部資源の存在期間が水生生物群集に及ぼす影響

*吉田智弘(東京農工大・農), 伴雄大郎(東京農工大・院・農)

水や枯死有機物を溜めた樹洞は、森林に生息する水生生物群集にとって重要な生息場所である。樹洞内の水生生物群集は、樹洞のサイズや内部資源の量などによって規定されていることがこれまでに知られている。それら空間的・量的特性に加えて、内部資源の存在期間のような時間的特性もまた、その質的特性の変化を通じて水生生物群集に影響を及ぼすと予想される。本研究では、樹洞を模した人工容器を用いて、それらの設置期間を変えることによって、樹洞の内部資源の存在期間が水生生物群集に及ぼす影響を明らかにした。

2012年9月から翌年11月にかけて、コナラの優占する落葉広葉樹二次林において野外実験を実施した。蒸留水とコナラ葉リターを入れた人工容器を450日間コナラ樹幹部に設置した長期区と、各季節に50日間もしくは60日間設置した短期区を設定した。採集したサンプル内の環境因子を測定し、水生生物を同定・計数した。

短期区において、水量は初夏・夏よりも晩秋に少なく、葉リター量は秋・晩秋に有意に多くなる傾向がみられた。長期区では晩秋の同時期に回収した短期区と比較して、水量や葉リター量に違いはみられなかったけれども、微細有機物が有意に多く含まれていた。長期区では、短期区よりもヌカカ科の種の個体数が多く、また短期区でみられなかった捕食者のトワダオオカが出現した。これらの結果は、樹洞内の水や葉リターは流出入・分解によって変動するけれども、樹洞や内部資源の存在期間が長いと、微細有機物の沈殿量が増加し、それに伴い、微細有機物を選好する種が増え、水生生物群集が遷移したり、食物網構造が変化したりすることを示している。


日本生態学会