| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-059 (Poster presentation)

タリアメント川氾濫原における止水性生息場の履歴効果

*竹門康弘,寺田匡徳,小林草平,角哲也/京大防災研

河川の氾濫原上に形成されるたまりなどの止水性生息場では,増水時の氾濫による攪乱や渇水時の干上がりによって物理化学的環境や生物相が変化する.演者らはイタリアのタリアメント川の河岸崖上で2009年9月から1時間ごとに撮影したインターバルカメラ画像を分析し,たまりが形成されてからの履歴と水生動物相との対応関係を調べた.2011年5月,2012年9月,2013年7月に氾濫原上のたまりの環境条件と動物相の現地調査を行なった.ついで,たまりを本川からの比高の順に,わんど,低水たまり,準低水たまり,準高水たまり,高水たまりに区分し,環境条件と動物群集の関係について分析した.また,流木の有無が水生動物相に大きく影響することから,砂州上の流木の動態を併せて追跡した.その結果,中小の出水では消滅する流木や新規流倒木が少なく,年1回程度の出水で多くが更新されることがわかった.

止水性生息場の水生動物相を調査した結果,河畔林内の高水たまりでは止水性の底生動物の種数が多く特異的であることがわかった.また,流倒木の存在によって,微生息場の多様性が増加することもわかった.一方,平均水温や水温変動幅は準低水または準高水たまりで最も高く,溶存酸素量は最も低かったことが止水性の動物種が多い理由と考えられた.いっぽう,低水たまりには,流水性の底生動物の種数が多い傾向があった.これらのたまりの動物相の特徴とたまりの受けた攪乱履歴との関係を分析した結果,準高水たまり,高水たまりでは,たまりの存続期間が長いことが,止水性種ならびに流木依存種の増加に寄与すると考えられ,低水たまりについては,逆に攪乱直後に流水性の種群が移入し次第に減少すると推定された.また,攪乱履歴の過程で魚類の侵入機会があり,かつ流倒木の存在するたまりでは全底生動物の種数が低下すると推定された.


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