| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-063 (Poster presentation)

同所性カラ類4種の繁殖生態の比較

*油田 照秋(北大・地球環境),乃美 大佑(北大・環境科学),小泉 逸郎(北大・地球環境)

同所的に生息し似たような資源を利用する近縁種間の生態を比較することは、ニッチ分割や種分化の理解に大きく貢献すると考えられる。特に、繁殖生態の違いは各種の特異的な生活史戦略や進化史を理解するうえで重要になる。例えば、多産な生物は一般的に短命で、生存率が低く、密度効果がかからないことが多い。反対に、少産な生物は一個体の繁殖機会が多く、繁殖成功は他個体との競争に影響されるため、子一個体に対しての親の投資量が大きくなる傾向がある(r-K戦略)。そこで本研究では、同所的に生息するカラ類4種の繁殖生態を比べ、その要因を検討することを目的とした。

調査は、2009 - 2014年にかけて北海道大学苫小牧研究林にて巣箱を用いて行った。対象種はシジュウカラ(Parus minor), ヒガラ(Periparus ater), ヤマガラ(Poecile varius), ハシブトガラ(Poecile palustris)の4種で、繁殖個体数、繁殖開始日、卵数、巣立ち雛数、シーズン内の複数回繁殖率などを調べた。繁殖個体数は、どの年もシジュウカラが一番多く、続いてヒガラが多かった。卵数はシジュウカラが平均10.2個と一番多く、反対にヤマガラが平均7.5個と少なかった。また、複数回繁殖率もシジュウカラは55.7%と半数以上のペアがシーズン内に複数回繁殖するのに対し、他の種は11.1~0%と大きく異なり、シジュウカラは他種に比べ繁殖の生産性が高いことが分かった。

これらの結果は、シジュウカラの生存率が多種に比べ低いこと、または分散率が高いことを示唆している。本発表では、4種の進化史や冬の行動(渡りの有無、貯食など)の考察から、特にシジュウカラの繁殖の生産性の高さの要因を検討し、同所性カラ類の生活史や棲み分けについて議論する。


日本生態学会