| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-073 (Poster presentation)

温暖化がシイタケ害虫ナカモンナミキノコバエの発生に及ぼす影響

*末吉昌宏

ナカモンナミキノコバエは、森林内に設置したクヌギやコナラなどの丸太を用いて栽培される原木シイタケの主要な害虫の 1 種である。本種の幼虫がシイタケ子実体に穿孔し、子実体内部をスポンジ状にするほど食い入るため、食害や異物混入などの被害が生じる。本種は旧北区の温帯に広く分布しており、国内では北海道から九州までの地域で知られている。春と秋に成虫発生のピークがあることから、年二化性であり、幼虫または蛹で越冬すると考えられている。地球温暖化に伴う気温の上昇により、本種の発生消長が変化し、原木シイタケの生産量に影響することが考えられるため、森林内の発生消長の解明と気温上昇時の出現時期の推定を行った。

大分県日田市内 5 か所の原木シイタケほだ場を調査地とし、2014年 3 月から 6 月までの間、 3-4 日に一回、各所 1 時間をかけて成虫を捕虫網で採集した。また、2013 年 12 月から 2014 年 6 月までの間、調査地に温度計を設置し、気温の測定を行った。さらに、同年 6 月に調査地で採集したシイタケに潜入していた老熟幼虫を5 ℃、8 ℃、11 ℃、15 ℃の恒温槽で飼育し、蛹期の発育零点と有効積算温量を推定した。

捕獲調査における成虫の初見日は3月中旬であった。その後、徐々に捕獲数が増え、4 月下旬に多く見られるようになった。気温測定期間中に日平均気温が初めて発育零点を下回ったのが 12 月下旬であった。12 月下旬以降で日平均気温が発育零点を超える日数が 8 割以上あり、有効積算温度に達するのが 3 月上旬であった。これらの結果から、IPCC が予測している、4 つの温暖化シナリオ( 1.8 ℃上昇、2.8 ℃上昇、3.4 ℃上昇、4.0 ℃上昇)に従って気温がそれぞれ上昇すると、本種の成虫の出現時期は現在よりも一ヶ月から一ヶ月半ほど早まると予測された。


日本生態学会