| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-093 (Poster presentation)

両側回遊魚ボウズハゼの加入を決める要因ー環境か体サイズか?

*飯田 碧 (琉大熱生研)・渡邊 俊・塚本勝巳 (日大生物資源)・立原一憲 (琉大理)

両側回遊は海と川を行き来する通し回遊のひとつである。両側回遊魚であるボウズハゼは,主に熱帯島嶼域に生息するボウズハゼ亜科の1種であり,仔魚期を海で過ごしたのち河川へと加入し,その後は淡水で生活する。海から河川への加入は,環境の異なる水域への移動であるため,最適なタイミングで行われると予想されるが,本種の加入生態は未知である。本研究では,詳細な調査によって,本種の加入生態と加入に影響する要因を明らかにすることを目的とした。

和歌山県太田川河口域で2006,2007,2008年の3〜9月に原則として毎日,小型定置網による仔魚の採集と環境調査を行った。加入はいずれの年もピークを春から初夏とする4〜8月であったが,合計採集個体数は2006年12,766,2007年372,2008年942と,年により大きく異なった 。期間中には,毎年2〜6回の大きなピークが見られたが,それらと月齢,水温,降水量などの環境要因との間に明瞭な関係はなかった。1日の中での加入パタンを明らかにするため,河川に加入する様子を岸から観察 (計63時間) したところ,仔魚は日中の上げ潮に同調して加入することが分かった。加入仔魚の標準体長 (SL) は22.5–34.0 mm (n=1,304),耳石による海洋生活期間の推定結果は176–283日 (n=93) であった。SLなどの体サイズに加入時期による明瞭な変動は見られなかった。日ごとの加入と環境要因とに明瞭な関係性がなく,海洋生活期間が幅広い一方,多くの仔魚が27 mm SLで加入していたことから,本種の加入は,他の通し回遊魚で広く見られる環境要因によるものではなく,体サイズによると推察された。


日本生態学会