| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-100 (Poster presentation)

グッピーにおけるオスの体色とメスによる受精時期の操作

*佐藤綾,狩野賢司(東京学芸大学・教育)

性淘汰は同性間競争や配偶者選択という配偶前の状況だけでなく、精子競争やメスの隠れた選択を通じて配偶後にも生じていると考えられている。メスの隠れた選択は精子の受取、貯蓄、再交尾、排卵、受精、卵や子への投資など様々な段階で生じる配偶したオスに応じたメスの差別的な応答をさす。しかしながら、それらは名の通りメスの体内という隠れた場所で生じるため、配偶前の淘汰に比べて実証研究の不足が指摘されている。グッピーは卵胎生の小型魚類で性淘汰に関する様々な研究が行なわれている。本種はオスのみが体側面に黒、青、オレンジ色などの斑紋をもち、メスはオレンジ色の大きく派手なオスを配偶相手として選り好む。グッピーではメスが配偶してから子を産むまでの期間(妊娠期間)が配偶したオスの体色によって異なることが報告されている。本研究では、メスを派手もしくは地味なオスと配偶させ、その後一定間隔でメスを開腹して卵や胚の発達段階を調査することで、配偶したオスの性的形質に応じてメスの体内でどのような選択が生じているのか検討した。その結果、派手なオスと配偶したメスでは、地味なオスと配偶したメスに比べ、配偶後のより早い日数で卵の最終成熟が完了し、受精が生じていた。そのため、グッピーで知られるオスの体色に応じたメスの妊娠期間の差は、配偶後におけるメスの卵の最終成熟および受精のタイミングの違いによって生じていることが示された。グッピーは乱婚の繁殖様式をもち、メスは1度の繁殖にあたり複数のオスと配偶する。そのため、好みでない体色の地味なオスと配偶したメスでは、再交尾のために卵の最終成熟や受精のタイミングを遅らせるという隠れた選択が生じている可能性が示唆された。


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