| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-128 (Poster presentation)

準絶滅危惧種マダラヤンマの生息場所利用

*阿部建太,高橋大輔(長野大・環境ツーリズム),早川慶寿(マダラヤンマ保護研究会)

マダラヤンマは日本では北海道から長野県にかけて局地的に分布する北方系のヤンマ科のトンボであり、環境省レッドデータブックにおいて準絶滅危惧種に指定されている。小雨地域である長野県上田市には農業用水の確保を目的としたため池が数多く存在し、これらのため池は本地域の独特な里山景観を構成する主要な環境要素であると共に、本種の重要な生息地ともなっている。マダラヤンマは上田市において天然記念物に指定されており、またその保全活動を行う団体が複数存在するなど関心を寄せる地元住民も多いことから、本種は地域のステークホルダーの自然環境に関する多様な活動を促す「環境アイコン」になり得ると期待される。今回、本種の保全策を検討する基礎資料とするために、上田市の17のため池においてマダラヤンマの生息の有無とため池の環境特性との関連性について調べた。マダラヤンマが生息する池か生息しない池かを目的変数とし、ため池の土手の構造や満水面積、ため池から森までの距離など11項目を説明変数とした一般化線形モデルによる解析から、本種の生息有無を予測するモデル構築には、抽水植物のヒメガマが池の周囲を占める割合、ため池から森までの距離、ため池から果樹園(主にリンゴを栽培)までの距離の3つの変数が重要であることがわかった。この結果から、抽水植物の茎を産卵基質とする本種にとって特にヒメガマが豊富に生育し、かつ羽化後の森林への移動のために森が近くにあるため池がマダラヤンマの生息環境として好まれると思われた。また、果樹園が近くにあるため池ほど本種の生息が確認される確率が高かったことは、果樹園が森林の代替機能を果たす可能性を示唆する。


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