| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-134 (Poster presentation)

遊水地計画のある北海道安平川湿原の植生と水文化学環境との関係

*島村崇志, 石川靖(道総研環境研), 矢部和夫(札幌市立大), 玉田克巳, 西川洋子, 山口高志(道総研環境研)

北海道安平川湿原は、数少ない大規模フェンであり、また、河道内調整地として利用が決定しており、生物多様性保全と防災的利用の両面から注目される湿原である。湿原内の植物群落タイプと水文化学環境から湿原の成り立ちを明らかにし、保全の方向性を検討した。安平川湿原は、道道、安平川、勇払川に囲まれ、河道切り替えにより通水が停止した旧安平川が湿原内を東西方向に蛇行している。調査は、湿原の北半分の約1.5 km四方の範囲を対象とし2013~2014年にかけて行った。湿原内の地下水の流れを知るため、29地点に井戸を設置し、標高水位を算出した。また、89地点で植生調査行い、相対水位、pH、EC、DTN、DTP、主要イオンの測定を併せて行った。群落はTWINSPANによりA: ヨシ-イワノガリヤス群落、B: イワノガリヤス-ヒメシダ群落、C: ムジナスゲ-ヒメシダ群落、D: ハンノキ-ホザキシモツケ群落、E: ハンノキ-ヤチヤナギ群落の5つに大別された。B群落は氾濫原湿原タイプであるが、ヒメシダの被度が高く乾燥化の進行が示唆された。また、C群落では貧栄養な環境を好むムジナスゲが優占していた。この湿原では、乾燥化と貧栄養化の両方が起きていると考えられる。群落種組成の違いを最も良く説明した水環境要因は水位変動幅であり、次に相対水位であった。湿原内の地下水は旧安平川沿いに東から西に向かって勇払川に流出していた。旧安平川の通水停止以前は、氾濫原湿原として現在よりも高水位に対応した群落が成立していたと考えられることから、旧安平川の堰上げ等により湿原内の群落を高水位な方向へシフトさせ、湿原を保全していくことが重要である。


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