| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-166 (Poster presentation)

環境保全型稲作実施水田における植物群落の特徴

*内藤和明,佐川志朗(兵庫県立大・地域資源)

環境保全型稲作が実施されている水田における植物群落の特徴を明らかにするために,兵庫県北部の豊岡盆地において,「コウノトリ育む農法」を実施している水田(保全型水田)と慣行農法を実施している水田(慣行水田)の植生を調査しして比較した.この農法は農薬の不使用あるいは削減,湛水期間の延長,有機資材の活用などを特徴とする特別栽培の一手法である.

盆地内に3地区を選定し.各地区において保全型水田および慣行水田それぞれ10圃場を選定し調査圃場とした.各圃場の,水田内部および畦畔にそれぞれ3プロット(各々1m2)を設置し植物社会学的な方法により植生調査を実施した.調査の時期および回数は,水田内部については,6月中旬,7月上旬(田植え後),8月上旬(出穂後),および9月上旬(収穫前)の4回,畦畔については,6月中下旬および9月中旬の2回とした.得られた植生調査資料から,プロット当たりの出現種数および出現種の被度合計を算出するとともに,被度データに基づくDCA分析を行い調査時期毎にプロットを序列化した.

プロット当たりの出現種数は,水田内部においては6月中旬および7月上旬に慣行水田よりも保全型水田で有意(glmm,p<0.01,以下同)に多かったが,8月上旬および9月上旬には一定の傾向は見られなかった.畦畔においては6月中下旬および9月中旬のいずれも保全型水田で有意に多かった.水田内部におけるイネ以外の出現種の被度合計は,全ての調査時期において保全型水田で有意に高かった.すなわち,農法間の比較では,保全型水田の方が出現種数が多く被度が高いことが確認された.一方で,DCA分析の結果からは,出現種やその被度の相違によって地区間で異なる植生が成立していることもうかがえた.


日本生態学会