| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-173 (Poster presentation)

侵略的外来種ウシガエルの侵入に対する生物多様性保全の指標としての水生昆虫

*西原昇吾(東大・農学生命科学),佐藤良平(久保川イーハトーブ自然再生研究所),須田真一(東大・農学生命科学),千坂嵃峰(久保川イーハトーブ自然再生研究所),鷲谷いづみ(東大・農学生命科学)

淡水生態系の生物多様性の喪失は世界的に著しいため、その保全が必要である。喪失要因の中で深刻な問題となっている侵略的外来種の侵入に対し、その影響の把握、早期の排除の開始、排除の効果についてのモニタリングが重要となる。その際には指標種を用いた適切な評価が必要である。水生昆虫類は高次の捕食者であり、環境選択性が強く、減少傾向が著しいため、水辺環境の指標種として適する可能性がある。本研究では、ため池群における侵略的外来種の侵入に対する水生昆虫の指標性について検討した。

生物多様性の高い数百のため池が残存する岩手県南部の久保川流域の丘陵地では、2005年頃よりオオクチバス、アメリカザリガニとともに侵入したウシガエルが急速に分布を拡大している。ウシガエルは水生生物に多大な影響を及ぼすため、久保川イーハトーブ自然再生協議会の自然再生事業として、2010年より排除が開始された。

ウシガエル侵入の有無による池の水生生物相の違いについて、2010年に63ヶ所で調査を実施した。その結果、ウシガエルの侵入した池ではケシゲンゴロウやキベリクロヒメゲンゴロウなどの小型の水生昆虫は確認されず、ゲンゴロウなどの中~大型種の個体数も少なかった。また、排除にともなうモニタリング調査の結果、ウシガエルの減少とともにヤゴが増加し、小型の水生昆虫を主とした水生生物種数も増加した。ゲンゴロウやガムシなどの中~大型種の回復も見られた。

以上の結果から、生物多様性の高いため池群における侵略的外来種ウシガエルの侵入に対する生物多様性保全の指標として、水生昆虫が有用である可能性が示唆された。


日本生態学会