| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-195 (Poster presentation)

環境保全オフセットという文脈における生態系サービスの空間的評価

*大場真(国立環境研),林希一郎(名大・エコ),伊東英幸(日大・理工),鈴木孝拓(名大・環境),長谷川泰洋(森林総研)

土地利用の転換は生物多様性や生態系サービスへ大きな影響を与え、特に都市や産業開発行為はこれらを大きく損なう場合がある。開発行為の回避や影響の最小化ではこの影響を無視できない場合は、代償(オフセット)が開発主体へ課される事例が増えてきた。しかし代償対象について、カーボンや生息地、生物多様性について研究あるいは事例が積まれているが、生態系についての研究は少ない。生態系は多様な生態系サービスを生み出しており、開発による影響は生物種だけでなく、物質循環や文化など多岐に及ぶはずである。

本研究では都市における生態系サービスの着目し、過去から現在にわたる土地利用変化がもたらした生態系サービスへの影響を評価し、望ましい土地利用シナリオを提示可能なアルゴリズムを試作した。

生態系サービスは、基盤、供給、調節、文化の4つのサービスに分かれるが、それぞれに代理変数を用いることによって定量化した。対象地域を名古屋市(1950, 1970, 2000年代)として、生態系サービスの分布をGISを用いて可視化した。土地利用変化のもたらした生態系サービスの損失を計算するとともに、保全優先度を用いて損失が大きい生態系がどこに存在するかを計算した。推定された優先して保全すべき地域を開発しない土地利用シナリオを示し、生態系サービスの損失の軽減を計算した。

今回提案したアルゴリズムは、様々なステークホルダーがGISを使って視覚的に開発による生態系サービスの損失と保全シナリオを計算でき、環境計画や生態系保全の施策提言に大きく貢献できる可能性を持っている。さらにこのアルゴリズムの応用によって、開発地が経済的理由で変更できない場合に、同等同質の生態系サービスをオフセットする候補地を推定することが可能となる。


日本生態学会