| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-207 (Poster presentation)

関東鶴見川水系におけるカワリヌマエビ属の分布とヌカエビへの影響

片山 敦,*吉川 朋子

近年,日本各地で外来種と考えられるカワリヌマエビ属のエビ類が確認されている.これら外来カワリヌマエビ属は,同属のミナミヌマエビに対する競合や雑種形成の可能性が指摘されている.島根県以北には,別属で純淡水種のヌカエビが分布しており,生息環境が似ているため競合などを引き起こす可能性があるが,その影響の有無については研究されていない.そのため本研究では,両者の分布が確認されている東京都,神奈川県を流れる鶴見川水系において,分布調査と,飼育実験,遡上実験を行い,カワリヌマエビ属がヌカエビへ与える影響について調査した.

分布調査の結果,カワリヌマエビ属は,ほぼ河川全域に生息しており,過去の調査よりも上流・下流ともに分布が広がっていた.一方ヌカエビの生息地は,一部の限られた河川や池のみであり,両者が同所的に生息している場所も確認された.主成分分析により各調査地を環境要因から座標付けしたところ,カワリヌマエビ属は幅広い環境に生息していること,両者の生息環境が類似していることが分かった.飼育実験では,両者を単独,または一緒に飼育し個体数の変化を調査したところ,ヌカエビを単独で飼育した場合よりも,カワリヌマエビ属と一緒に飼育した場合の方が,ヌカエビの個体数の減少が早かった.遡上実験(傾斜角45度)では,カワリヌマエビ属の複数回の遡上が確認された.

これらから,カワリヌマエビ属には遡上性があり,今後もより広い範囲へ分布を広げる可能性があること,また,ヌカエビの生息地に侵入すると,競合し個体数を減少させてしまう危険性があることが示唆された.


日本生態学会