| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-209 (Poster presentation)

外来植物セイタカアワダチソウの原産地と侵入地における遺伝構造及び侵入の歴史の解明

*坂田ゆず(京大・生態研),Joanne Itami (University of Minnesota, Duluth), 井鷺裕司(京大院・農),大串隆之(京大・生態研)

外来植物において、侵入過程での進化動態を明らかにするためには、移入集団の起源を推定し、その起源集団と移入集団との形質比較が必要である。本研究では、外来植物セイタカアワダチソウについて、2種類の中立遺伝マーカー(葉緑体、核SSR)を用いて、侵入地12集団と原産地22集団を対象とした集団遺伝学的解析を行い、集団の遺伝的多様性及び遺伝構造を明らかにし、起源集団を推定することを目指した。

その結果、日本ではハプロタイプ数が少なく、集団の68%は、遺伝的に均一で、北米南東部の集団が最も近縁な集団であることが示された。一方で、北海道の集団だけは異なる遺伝的組成を持っていることが明らかとなり、少なくとも2回の侵入があったことが示唆された。また、侵入地と原産地における動態解析からは、何れにおいても集団拡大モデルによく適合し、集団サイズの急激な拡大を経験した可能性が示唆された。さらに、侵入地の集団は、原産地と同様に高い遺伝的多様性を維持していた。以上のことから、多くの個体の侵入が最低2回あり、侵入地内の遺伝子流動によって集団間の遺伝的多様性が保持されたことが、セイタカアワダチソウが日本全国において急速な分布拡大と適応を遂げた背景となったことが考えられる。今後、北米南部集団との比較によって、侵入地での形質進化が明らかになることが期待される。


日本生態学会