| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-225 (Poster presentation)

ごみの埋立処分場から、自然再生のフィールドへ ~新たな価値の創出・東京都日の出町谷戸沢処分場の取り組み~

今井勇蔵,井上一也,田端弘司(東京たま広域資源循環組合),*坂本有加,*宗兼明香((株)環境総合研究所)

谷戸沢廃棄物広域処分場(以下、処分場)は、東京たま広域資源循環組合(以下、組合)が管理する一般廃棄物の最終処分場であり、昭和59年から平成10年までの14年間廃棄物の埋立を行った。処分場造成前年から現在まで動植物を対象とした生態モニタリング調査を実施し、埋立終了後からは埋立跡地に里山的環境を再生させる取り組みを続けている。生態モニタリング調査の結果は、処分場内に生息する絶滅危惧種の保全や草原の管理方法等を検討する資料として活用している。さらに近年、組合では構成自治体や地元の住民を対象にオオムラサキ放蝶会、夏休み処分場見学会、秋の見学会等を開催し情報発信にも取り組んでいる。見学会では埋立跡地に形成されたススキ草地で見られる動植物や、処分場内で確認された動植物の変遷状況、日の出町の自然についての解説を行ってきた。

見学会で実施しているアンケート結果では、約98%の参加者が自然環境の回復を実感したと回答しており、約80%の参加者が処分場に対する印象が良くなったと答えた。自由記述では「ごみの埋立跡地にも関わらず多くの生き物が生息していることに驚いた」、「分別後のごみの行方について理解が深まった」との意見もあった。

見学会は組合における適切な処分場の維持管理状況を紹介するだけでなく、廃棄物の行方や処分場の跡地利用、動植物の生活環境を守ることの大切さについて理解を深めることで、ごみの最終処分場に対する印象を変える良い機会となっている。

埋立跡地に豊かな自然が再生し、周辺の動植物が戻ってきた。生き物に生息環境を提供することで処分場に新たな価値を創出した。それらを自然と触れ合うことのできる「環境学習の場」等として有効活用し、処分場をアピールすることが地域への貢献につながると考える。


日本生態学会