| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


企画集会 T06-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

都市生態学の研究動向:特に鳥類学の視点から

*三上修(北海道教育大) ,森本元(山階鳥類研究所/立教大)

都市という環境は地球の歴史上からみるとごく最近、新たに誕生した環境といえる。いつからのものを都市というかは明確な定義はないが、せいぜい数千年、現代の近代化した都市という意味で考えると100年ほどの間に誕生した環境といえるだろう。

都市といえば自然度の低い環境、あるいは自然を薄めた環境というイメージがあるかもしれないが、都市は自然環境とは異なり都市特有の環境条件を持っている。たとえば、自然環境に比べて、壊れにくい基質(人工構造物)、豊富で安定した水量、高い気温、低い狩猟圧などである。それゆえ都市の生態系は、そのユニークさから、それ自体を研究対象とする価値があると認識されるようになってきた。そして都市は、特有の環境を持っているため、いくつかの種にとっては都市の方が自然環境よりもむしろ暮らしやすく、中には都市の中にしか生息していない生物もいる。

世界的に人口が増加し、それによって都市が拡大する現状において、都市においても生物多様性を守っていかなければならないという機運が高まっている。都市に自然を内包せずにコンパクトにしてしまった方が良いのではないかという考えもあるが、一方で、人が自然に触れ合う機会を持つことは、生活の質を向上し自然に触れ合う経験をもつことで将来的な持続可能な社会につながるという意見もある。

本発表では、この自由集会の入り口として、都市とはどのような特徴をもった環境なのか、どのような特徴をもった生物が暮らしているのかについて、おそらくもっとも都市生態系でよく扱われている分類群であろう鳥について話題提供をする。また都市においてどんな生物多様性を守る必要があるのかについての問題提起も行う。


日本生態学会