| 要旨トップ | ESJ62 自由集会 一覧 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


自由集会 W08 -- 3月18日 18:00-20:00 H会場

防潮堤工事と砂丘・海岸湿地の生態系保全―静岡県遠州浜の防潮堤工事におけるミチゲーションと自然再生―

企画者: 山田辰美(常葉大・社会環境), 北野 忠(東海大・教養)

東日本大震災で発生した大津波は、全国各地の被害想定を大幅に塗り替え、海岸や河口域に大規模な津波対策工事が提案されている。静岡県浜松市では企業などからの寄付金と民意の後押しを受けて、主要な市域を守るために、天竜川河口から浜名湖に及ぶ17.5km区間に高さ13mの防潮堤を建設することになった。

当該の沿岸域にはアカウミガメの産卵地で知られる長大な浜や大砂丘があるだけでなく、松林の中に知る人ぞ知る海岸湿地があり、単純と思われがちな海浜環境に貴重性の高い固有の生態系が展開していることは、地元の人々にもあまり知られていなかった。県内の研究者は県版RDBに「守るべき自然環境」として掲げるなどしてきたが、特別な自然保護の施策も講じられないまま看過されていた。それが防潮堤工事の調査で、希少な生物が多数生息する生物多様性ホットスポットの存在が改めて認識されたのである。川から始まる沿岸域の形成と遷移の歴史に攪乱の加わるプロセスの中で、海岸の後背湿地や砂丘等の環境は変化してきたものである。海岸湿地が生物群集の異なる複数の池を有することや、広い砂丘を動き回って狩りをする昆虫が存在することなど、現存する貴重な自然が浮き彫りになってきている。静岡県浜松土木事務所は、ふるさとの原風景や固有の自然を守ることを大規模な防災工事における大切な要件と考え、生態学者と共に取り組む姿勢を示している。建設に伴う環境負荷の軽減だけでなく、むしろ工事の手を入れることで自然を残す可能性を大きくする試み(自然再生)について、皆様と共に検討したい。

[W08-1] 沿岸域の環境改変と生態系保全の課題  山田辰美(常葉大・社会環境)

[W08-2] 浜松市沿岸域防潮堤計画とミチゲーション  鈴木健泰(静岡県浜松土木事務所)

[W08-3] 遠州浜の海岸湿地と大砂丘における昆虫相の現状と対策  *北野 忠(東海大・教養),福井順治(桶ヶ谷沼ビジターセンター)

[W08-4] 海岸湿地の生物多様性を侵す外来種の脅威  苅部治紀(神奈川県博)

[W08-5] その他の地域における海岸域生態系の保全事例(予定)  演者未定


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