| 要旨トップ | ESJ62 自由集会 一覧 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


自由集会 W22 -- 3月21日 17:30-19:30 D会場

ヤクシカと屋久島森林生態系の保全と管理

企画者: 矢原徹一(九州大学)

屋久島ではヤクシカの増加によって、農林業被害とともに、林床植生・絶滅危惧植物の劇的な減少が生じている。また、ヤクシカの不嗜好植物である外来種アブラギリが急速に増え、一方で嗜好植物であるヤブニッケイなどの更新に影響が出ている。企画者は2004-06年にヤクシカと林床植生・絶滅危惧植物についての全島調査を実施し、ヤクシカ個体数管理の必要性を指摘した。その後、2009年,世界自然遺産地域科学委員会が組織され、この委員会の助言の下で、環境省・林野庁・鹿児島県・屋久島町の連携によるヤクシカの駆除(鳥獣保護法に基づく有害捕獲)が強化されてきた。

2012年からは2カ年続けて年間4500頭をこえる捕獲(有害捕獲及び狩猟)が実施されたが、捕獲効率低下の兆候はなく、個体数はなお増え続けている可能性がある。また狩猟や有害捕獲の大部分は、国有林や西部の県有林以外のエリアで実施されている。一方で、2004-06年には良く保存されていた南部の林床植生(国有林内)が顕著な食害を受け、ツルラン・コモチイノデなどの絶滅危惧種が激減したが、この地域での個体数管理は実施できていない。この状況の下で、ヤクシカと屋久島の森林生態系の保全・管理のあり方ついて考えたい。

矢原・松田・則久による講演のあと、環境省・林野庁からの取組みの報告を受け、その後に総合討論を行う。ヤクシカの個体数推定、将来予測、遺伝的分化、島内各地での林床植物の減少、植生保護柵の保全効果、アブラギリの分布拡大、森林更新への長期的影響などについての最新データをもとに、肉の有効利用も視野に入れた保全・管理のあり方を議論する。

[W22-1] ヤクシカと屋久島森林生態系の保全・管理の現状と課題  矢原徹一(九州大学/屋久島世界自然遺産地域科学委員会委員長)

[W22-2] ヤクシカの個体群管理とゾーニング  松田裕之(横浜国大)・藤巻碧海(横浜国大)・塩谷克典(鹿児島県環境技術協会)

[W22-3] 第二種特定鳥獣(ヤクシカ)管理計画の策定について  則久雅司(鹿児島県環境林務部自然保護課長)


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