| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) F1-05 (Oral presentation)

針葉樹には光呼吸に必須な葉緑体型グルタミン合成酵素(GS2)が存在しない

宮澤真一(森林総研)*, 宮尾光恵(生物資源研), 二村典宏(森林総研)

光呼吸はC3植物の純CO2固定速度を大きく制限する代謝であり、代謝経路にアンモニアの発生、および再同化経路を内在する。シロイヌナズナやオオムギなどの草本植物の突然変異体を用いた研究によって、葉緑体型グルタミン合成酵素(GS2)はアンモニアの再同化に必須であることが知られている。発現遺伝子情報が得られるスギ(ヒノキ科)、シトカトウヒ(マツ科)、ヨーロッパアカマツ(マツ科)について、シロイヌナズナのGS2、および細胞質型グルタミン合成酵素(GS1)のアミノ酸配列をもとに、これらの樹種のGSオロソログの検索を行った。さらに、落葉広葉樹(ポプラ、ブナ、クワ、クヌギ)、イチョウ、および、イチイ科、マキ科、マツ科、ヒノキ科に属する針葉樹11種について、GS抗体を用いたウェスタンブロッティング法によってGS1とGS2の識別を行った。その結果、シトカトウヒ、ヨーロッパアカマツ、スギにはGS1オルソログは存在するものの、GS2オロソログの存在は確認できなった。ウェスタンブロッティングの結果から、落葉広葉樹とイチョウについてはGS1とGS2を検出することができたが、針葉樹は全ての種においてGS1のみしか検出できなかった。以上の結果は、針葉樹には光呼吸に必須なGS2が存在しないことを強く示唆した。


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