| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) F3-41 (Oral presentation)

露地ナス圃場周辺における土着カブリダニ類の生息実態の解明

*浜崎健児,柴尾 学(大阪環農水研)

果菜類の重要害虫ミナミキイロアザミウマは、薬剤感受性の低下により防除が困難となっている。天敵を含めたIPM体系として土着カブリダニ類の活用が検討されているものの、大阪府内での生息実態は明らかにされていない。最近ではスワルスキーカブリダニ(以下スワルスキー)が施設だけでなく露地のナス栽培でも農薬登録され、利用が検討されている。本種は海外からの導入種であり、ギルド内捕食や近縁種との交雑の可能性が指摘されているものの、圃場外への分散の実態は明らかにされていない。そこで、2015年に大阪府泉州地域の露地栽培ナス圃場で土着カブリダニ類の生息実態を調査するとともに、ナス株上にスワルスキーを放飼して定着と周辺への分散の有無を調査した。露地栽培ナス(品種水ナス)の1圃場で周辺草地6地点から30 cm四方の植物を採集し、ツルグレン装置を用いてカブリダニ類を抽出後、標本にして同定・計数した。この調査はナス定植前の4月から栽培終了後の10月に月1~2回行った。また、スワルスキーは定植1か月後の6月上旬にナス株あたり150個体を放飼し、その後のカブリダニ類の発生個体数を40株それぞれ2葉2花の見取りと花たたきにより計数した。葉上または花内のカブリダニ類は適宜採集して種を確認した。これらの調査は6~9月に月1~2回行った。以上の結果、周辺草地からはニセトウヨウカブリダニ(以下カブリダニを省略)、ミチノク、ニセラーゴ、コヤマ、ヘヤ、ケナガ、オキナワ、タテスジの4属8種のカブリダニ類が確認された。このうちスワルスキーと同属の種はニセトウヨウ、ミチノク、ニセラーゴであった。放飼したスワルスキーは6月下旬に葉あたり0.4個体であったが、その後減少して7月中旬にはみられなくなった。また、周辺草地のスワルスキーの生息は調査期間を通して確認されなかった。


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