| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) F3-43 (Oral presentation)

日本のホロミジンコ:その正体を探る

*山元綾弥香,牧野渡,占部城太郎(東北大学・生命科学)

ミジンコ類の仲間であるホロミジンコ属Holopediumは、日本を含む北半球や南アメリカ大陸など広い範囲に分布し、形態的な違いによりH. gibberumH. amazonicumの2種に分類されてきた。近年、北半球のH. gibberumとされてきたタクサにはさらに遺伝的に異なるH. glacialisが含まれることが明らかにされた。しかし、日本に生息しているホロミジンコはH. gibberumなのかH. glacialisなのか、あるいは両種とも生息しているのか分かっていない。そこで本研究では、日本のホロミジンコの正体を解明するための分子生態学的解析を行った。即ち、北海道から九州にかけて広汎に採集したホロジジンコについて、mtCOI(約630bp)と核DNA・18SのV4領域(約290bp)とV7領域(約220bp)を調べ、得られた塩基配列をノルウェーで採集したH. gibberum個体やカナダで採集したH. glacialis個体と比較した。

解析の結果、mtCOIでは日本で6個、ノルウェーで3個、カナダでも12個のハプロタイプが得られたが、これら地域間で共通するハプロタイプはみられなかった。しかし、日本のハプロタイプはノルウェー産の狭義のH. gibberumのものとほぼ相同であったのに対し、カナダ産のH. glacialisのハプロタイプとの間では12.7%の塩基置換があった。またV4領域とV7領域でも、日本の個体の配列はノルウェーの個体の配列と相同であったのに対し、カナダの個体との間にはV4領域では6.7%、V7領域では1.6%の変異があった。これらの結果から本研究で採集した日本のホロミジンコ集団はすべてH. gibberumであることが分かった。


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