| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) H3-36 (Oral presentation)

最終氷期最盛期における植生復元の基礎資料としてのチョウセンゴヨウ花粉生産量

三宅悠平,*高原 光(京都府大・生命環境),中村琢磨(九州大・北海道演),杉田真哉(京都大・農)

現在の生態系を形作る原点でもある最も寒冷で乾燥した時期であった2万〜2万数千年前の最終氷期最盛期(LGM)における東アジアの植生を,花粉分析データ等に基づき,復元しようとする研究を進めている。

近年,化石花粉組成から植生の空間的広がりを客観的に復元する方法として,Sugita (2007a, 2007b)はLandscape Reconstruction Algorithm (LRA)を開発した。これにはパラメーターとして,花粉生産量と花粉落下速度が必要である。

日本産樹木の花粉生産量について,リタートラップ法によって行われてきた結果が,齋藤(2012)によってまとめられている。しかし,上記のLGMに日本列島で優勢であったマツ科針葉樹の花粉生産量はモミ属,マツ属(二葉型)以外は未解明である。

本研究では,これらのうちマツ属(五葉型)のチョウセンゴヨウについて,リタートラップ法を用いて花粉生産量を推定した。調査地は九州大学北海道演習林7林班の44年生チョウセンゴヨウ人工林である。この林内にリタートラップ12個を設置し,雄花落下量を測定した。また,別に未開花の雄花を複数個体から採取し,この中の葯中の花粉数を計数し,雄花あたりの花粉数を求め,これにリタートラップ法で推定した単位面積あたりの年間雄花落下量を乗じて花粉生産量を推定した。その結果,この林分における2015年のチョウセンゴヨウ花粉生産量は7.6×1012個/haであった。この値は齋藤(2012)による日本産樹木の花粉生産量(1012〜1013個/ha)の範囲内にあった。花粉生産量には年変動があるので,今後も調査を継続し,さらに,トウヒ属などについても研究を進める計画である。


日本生態学会