| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) J2-21 (Oral presentation)

第一原理から導かれるダイナミクスの安定性について

*佐藤一憲(静岡大学)

個体群動態モデルを,各々の個体の出生と死亡の単純なルールから導くことは「第一原理」に基づく方法と呼ばれて,これまでに様々なものが提案されてきた.特に,離散時間のモデルを導くためのサイトベースモデルによって,多くの基本的な個体群動態モデルの原理が明らかになっている(Brännström and Sumpter, 2005).サイトベースモデルのアイディアは,サイト上の個体数の分布と個体数に応じた出生率を与えることであるが,これらをうまく決めることができれば,目的とするモデルを得ることができる.たとえば,個体をサイト上にランダムに分布させて,スクランブル型の競争に対応する出生率を与えてやれば,Rickerモデルが得られる.Rickerモデルでは,パラメータを変化させることによって,平衡点に収束する単純な場合からカオスのような複雑な場合まで,様々なダイナミクスが現れることが知られている.一方,個体の分布と出生率を変えれば,パラメータによらずに常に平衡点に収束するような,安定なダイナミクスを示すモデルを得ることもできる.本講演では,サイトベースモデルから得られるいくつかのモデルに焦点をあてて,それらがもつパラメータの値を変化させることによって現れるダイナミクスの安定性の違いについて考える.たとえば,コンテスト型の競争とスクランブル型の競争による違い,個体の分布を制限することによる違い,出生率の大きさや個体の分布を決めるパラメータの大きさが与える影響について報告する.


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