| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-006 (Poster presentation)

自然撹乱としてのシカ採食の役割―林床植物の群集集合プロセスからの評価

*西澤啓太, 辰巳晋一(横浜国大・環境情報), 北川涼(森林総研), 森章(横浜国大・環境情報)

近年、世界中でシカの増加による生物多様性パターンの変化が問題となっている。その中で、将来の植生を予測し、生物多様性の保全につなげる上で、シカの採食が植物群集を変化させるメカニズムの解明は重要である。そこで、本研究では上の目的で、防鹿柵の内側と外側においてそれぞれ共存する種の機能形質のパターンをもとに林床植物の群集集合プロセスを推察する。

研究材料として、知床半島において設置から10年以上経過している防鹿柵を用いた。本研究では、柵の内外でそれぞれ約100個の調査区を設定し、それぞれの場所で植生データ、環境データ、各種の形質データを採取した。

柵の設置の効果として植被率は柵内で高かったが、多様性(α、β、γ)はともにシカの影響を受ける柵外で高くなっていた。各群集に出現する種の機能形質の多様性(機能的多様性:FD)には柵内外で有意差は見られなかったが、環境要因との関係では、柵内で植被率との間に有意な負の相関が見られた(柵外は相関なし)。このとき、FDはランダムに期待される群集との差(観察値-期待値)を計算して使用した。観察値が期待値より高い場合はニッチのすみ分けが、低い場合は競争優位な形質を持つ種の優占が起きていると予測される。

柵内におけるFDと植被率の負の相関は、植被率に沿って異なるプロセスで植物群集が集合していることを示している。この植被率は柵の設置以降、増加し続けていることから、様々な形質の種がすみ分けていた群集が、競争能力の規定する群集に変化し、結果として種の多様性が減少したと考えられる。これらのことから、シカの採食が生物的撹乱として植物種間の競争関係を弱め、植物の多様性形成プロセスに貢献していることが示された。


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