| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-010 (Poster presentation)

火入れ後の地温変化を考慮した草原性植物の発芽特性

*増井太樹, 津田智 岐阜大 流域圏センター

火入れは、植物に対し個体地上部の焼失という直接的な影響を与えるだけでなく、火入れ後には地面の黒化による地温変化が起こり、植物の生育に影響を与える。地温の変化は植物の発芽を決定する重要な要素であり、火入れ地特有の地温変化が草原性植物の発芽に何らかの影響を及ぼしている可能性が考えられる。そこで本研究では火入れ地とそれに隣接する火入れを休止し樹林化した地点で地温を比較し、それを再現した発芽実験を行うことで、火入れ後の地温変化が草原性植物の発芽に及ぼす影響について検討した。

調査は、岡山県蒜山地方で火入れ地と火入れが休止されて7年経過した場所(以下放棄地と呼ぶ)の地中約1㎝に温度ロガーを設置し、火入れ後の発芽時期である5月の地温を測定した。測定された地温変化の結果に基づき、インキュベーターの温度条件を4パターンの変温(10/15℃,10/20℃, 10/30℃,10/40℃)に設定し、キキョウやオミナエシなど草原性植物約20種の発芽実験を実施した。種子は実験前に低温湿潤処理を1か月間行い、その後、インキュベータに入れ、1か月間の発芽率を記録した。

地温測定の結果、火入れ地と放棄地では夜間の地温には違いが見られなかったものの、日中は火入れ地の方が高くなった。火入れ地では地温は日中20℃を超え30℃近くになる時間があったが、放棄地では日中でも15℃前後であり、20℃を超える時間はほとんどなかった。

発芽実験の結果、10/30℃の環境では多くの種の発芽が見られ、オミナエシ、フシグロ、オカトラノオ、サワヒヨドリはこの温度帯で最も発芽率が良好であった。すなわち、火入れによる地温変化の増大により草原性植物の発芽にとって良好な環境が維持され、それによって草原植生が成立していると考えられた。


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