| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-026 (Poster presentation)

熱帯降雨林における伐採に対するレジリエンスの空間変異 -Landsat時系列解析を用いて-

*園田隼人,藤木庄五郎,青柳亮太,北山兼弘,(京大,農,森林生態)

熱帯林の消失・劣化が急激に進んでおり、その保全は国際的な課題である。現在でもボルネオ島は世界で最も森林減少の激しい地域であり、その森林面積の過半が木材生産林であることから、木材生産林の持続性が保全の鍵となる。熱帯林においては、択伐と呼ばれる選択的伐採により木材が抜き切りされ、残存木からの更新によって森林は回復するとされてきた。森林回復は二次遷移として進むが、伐採規模に応じて遷移の始相と系列が変化し、回復しないこともあり得る。そのような視点からの解析は行われていない。そこで本研究では、マレーシア・サバ州の木材生産林を対象とし、長期・多時期におよぶLandsat衛星画像の時系列解析によって、森林回復速度(レジリエンス)の空間変異とその原因を明らかにすることを目的とした。多時期のLandsat衛星画像について、大気状態や地形の補正を行った後、最も雲の影響が少なかった2009年の画像を基準として標準化処理を行った。それらの画像の分光反射特性と現地調査から得られた地上部バイオマス(AGB)データと合わせてAGB予測モデルを作成し、この予測モデルを各画像に外挿することによって景観レベルでAGBを推定した。画素毎の2時期間におけるAGB増加速度をレジリエンスとして評価した。その結果、木材生産林のレジリエンスには空間変異が存在し、伐採前のAGBが低く未発達な森林ほど、伐採からのレジリエンスが低下する傾向にあることが分かった。また、伐採道としての使用や火災などの森林伐採以外の要因が、レジリエンスの喪失に関わっている可能性も示された。伐採後のレジリエンスは決して一定ではなく、特定の条件下では消失・低下し得ることが明らかとなった。


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