| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-094 (Poster presentation)

日立鉱山跡に自生するツルウメモドキ(Celastrus orbiculatus Thunb.)実生のAl耐性

*山野大樹,山路恵子,江並一成(筑波大学大学院・生命環境)

茨城県日立市の日立鉱山は,明治期以降の拡大によって国内で有数の規模の鉱山となったが,付近に煙害をはじめとする鉱害をもたらした。約30年前に閉山した鉱山跡地の土壌は精錬による亜硫酸ガスによって酸性を呈しているため,植物に対するAl毒性の存在が考えられる。本研究室での先行研究では前述の環境下において自生する植物,ツルウメモドキ(Celastrus orbiculatus Thunb.)がAlストレス耐性を示す可能性が確認された。

本研究ではAlストレス環境下で生育するツルウメモドキの耐性機構,すなわちツルウメモドキにおけるAlの解毒機構の解明を目的とした。

先行研究の結果を踏まえて,日立鉱山跡地に位置する調査地環境ならびに現地で自生するツルウメモドキ実生について,各種分析に供した。特に,現地に自生するツルメモドキ実生についてはICP-OESを用いた分析に供した。また,採取した一部の実生については抽出操作を行い,得られた抽出物についてHPLC-DADを用いた定性分析,ならびにGC/MSを用いた定性分析に供した。

分析の結果,現地におけるツルウメモドキ実生の植物体内からは高濃度のAlが検出された。また,抽出画分からは毒性を示すAlの形態であるAlイオンに対して錯体を形成することが知られている縮合タンニン並びに主要な有機酸としてリンゴ酸,クエン酸が検出された。

以上の結果から,日立鉱山跡地に自生するツルウメモドキ実生はAlを植物体内に高濃度に含んだ状態で生育し,Al解毒物質である縮合タンニンやリンゴ酸やクエン酸といった有機酸を産生することによって,体内のAlを解毒している可能性が考えられた。


日本生態学会