| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-097 (Poster presentation)

異なる標高の亜高山帯湿原における異なる機能群の植物の窒素利用効率

*金子麻里(東北大・院・生命科学) ,神山千穂(UNU-IAS),彦坂幸毅(東北大・院・生命科学)

植物の生理・形態など機能的特性の違いは、窒素獲得・利用に影響を与えると予想される。本研究では、二つの標高の湿原に共存する種について、機能群間(落葉/常緑、草本/木本など)の窒素獲得・利用特性の違いと標高の影響を解析した。

窒素獲得効率(NAE;葉重あたり獲得窒素量)は落葉種・草本種で高かったが、葉への投資量あたりの獲得窒素量(葉生涯NAE)として評価すると、機能型による違いは小さかった。窒素利用効率(NUE)は落葉種・木本種・高標高で高かったが、違いは小さかった。NAEとNUEの積である葉重あたりの生産量(LP)は落葉種で高かったが、葉生涯NAEとNUEの積である葉生涯LPには機能型や標高による違いはなかった。これは、単位時間あたりで比べると落葉種は高い成長速度をもつが、ベネフィット/コスト比である葉への投資量あたりの生産量として比較すると、いずれの種も同程度であることを意味する。

NUEは保有窒素あたりの生産量(窒素生産力NP)と平均窒素滞在時間(MRT)に分解されるが、よく知られているように、NPは落葉種で高く、MRTは常緑種で長いというトレードオフが見られた。興味深いことに、高標高と比べ、低標高にはMRTが長い種が見られず、高標高で生存するためには長いMRTが、低標高で生存するためには高いNPが必要であることが示唆された。これは八甲田山系において高標高ほど常緑種数が多いことを説明するかもしれない。また、窒素固定種や食虫植物はNPが高く、MRTが短いという結果が得られた。

結論:種の窒素獲得・利用特性は、機能群や標高によって異なる。この違いが標高による機能群の分布の違いの要因となる可能性が示唆される。


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