| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-103 (Poster presentation)

都市環境下に生育する街路樹の光合成応答

*清水啓史 半場祐子 木下智光 京都工芸繊維大学大学院

街路樹は景観の向上、CO2吸収効果や蒸散による冷却効果などが期待されている。しかし、実際の都市環境下では大気汚染物質だけでなく気温、土壌水分など多くのストレスが複雑に関わり街路樹の光合成機能・葉内構造に影響を与えているため、どのストレスが街路樹に大きな影響を与えているか特定する必要がある。本研究では街路樹にストレスをもたらす環境要因を特定するための研究の一環として、京都市内の大気汚染物質濃度が異なる5つの調査地を設け、京都市内で最も多く植えられているイチョウ、ヒラドツツジを用いて光合成パラメータ、葉の内部構造への影響を調査した。調査の結果、気温・湿度・VPDに調査地間に有意差はなく土壌のpHや含水率にも大きな差は見られなかった。このことから調査地間で異なっている主な環境要因は大気汚染物質のレベルであると考えられる。2014年度の結果から京都市内に生育しているイチョウ・ヒラドツツジにおいて大気汚染物質による光合成の生化学的な機能や葉内構造に大きな影響が無いことが示された。イチョウは調査地間でgsに差は見られなかった。イチョウはストレス耐性をもつ樹種であることが知られている。そのため、京都市内の大気汚染物質濃度レベルでは気孔を閉鎖するに至らなかった可能性がある。一方、ヒラドツツジでは大気汚染物質濃度が高い調査地でgsが低くなっていた。gsが低下したことにより、EやAmaxの低下が生じたと考えられる。また、気孔が閉鎖していることはヒラドツツジの葉のδ13Cからの結果からも推測できる。ヒラドツツジでは気孔を閉鎖したことにより大気汚染物質の侵入が少なくなったと考えられ、Vcmax、Jや葉内の内部構造に影響がなかった可能性がある。2015年度ヒラドツツジを用いて同様の調査を行った結果、2014年度の結果を確認することができた。


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