| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-134 (Poster presentation)

グルコシノレート側鎖長の多様化とアブラナーシロチョウ相互作用における役割

岡村悠*, 村上正志 (千葉大・理)

生物の多様性がいかにして形成されたのか、という疑問を考える上で、最も多様性の高い植物とそれを利用する植食者に注目することは重要である。これら2者は互いに防御、適応を繰り返し、相互作用関係をもつ。EhrlichとRavenは、この相互作用内において、植物の防御の多様化が植食者側の多様化を引き起こす、とする植物-植食者共進化仮説を提唱した(Ehrlich and Raven 1964)。これは生物多様性形成の1側面を説明する上で非常に重要であるが、共進化の具体的なメカニズムが明らかとなった例はない。本研究では二次代謝産物の一種で多様性に富んだグルコシノレート(GSL)を防御として保有するアブラナ科草本と、それに特異的に適応しているシロチョウ亜科蝶類間の相互作用をモデルとして用い、GSLの多様化とシロチョウの適応の歴史を明らかとする事を目的として、両者の系統比較、植物防御形質測定、摂食実験を行った。

アブラナ科草本27種とシロチョウ4種を用いた摂食実験の結果、シロチョウの選好性は2タイプに分かれ、これはシロチョウの系統を反映していた。さらにその選好性の違いは植物の保有するaliphatic GSLの側鎖の長短に依存して決まることが示唆された。また、系統解析から各アブラナ科草本の保有するGSLのプロファイルは植物の系統を反映することも示唆された。

これらの結果は、アブラナ科草本は系統進化に伴いながらGSLの側鎖を変化させ、その側鎖の長短の変化に対応してシロチョウ側も適応進化をしてきた、という事を示唆する結果と言え、アブラナ科草本の保有するGSLの側鎖の長短の変化が、シロチョウの適応進化を引き起こすという共進化のメカニズムの一端を示唆している。


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