| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-146 (Poster presentation)

非破壊的な盗蜜者による植物の繁殖への影響:サワギキョウでの訪花行動と蜜報酬の変化

*松原 豊, 酒井聡樹(東北大・生命科学)

花序を形成する植物は、繁殖器官を複数以上に分割することで個体としての開花期間や損傷時の保険などの利点がある。一方で、花序内の花間には自殖の危険が伴うため、雌雄異熟や蜜報酬などによって花序内の個花ごとに適法訪花行動を変化させうる。

一方、訪花者の中には盗蜜者などの今まで送粉に貢献しないと考えられてきた動物が古くから存在する。近年では、蜜報酬の変化が適法訪花者の訪花行動を変化させるといった間接的な受粉への貢献などの役割が注目されている。しかし繁殖への一貫した関係性についてなどの知見は乏しい。

今回、雄性先熟のサワギキョウについて、訪花行動観察と除蜜や盗蜜者排除といった人為的処理を行い、個体あたりの開花から結実までの蜜・送粉(花粉持ち去り)・種子生産について調査した。

その結果、除蜜によって盗蜜者の訪花率や訪花滞在時間が減少したが、適法訪花者の訪花行動には影響が無かった。また花序内で新たに開花する雄花の蜜量は処理・訪花観察を行った花(多くは雌期に移行)に対して多く、これらは自然状態での結果と類似していた。一方、盗蜜排除を行うと、新たに開花した雄花と処理・訪花観察を行った花はほぼ同じ蜜量まで回復していた。

一方で、種子生産は処理内でも盗蜜者を含めた訪花者の影響によって変化した。これは盗蜜後の花序内の連続訪花の減少や、盗蜜排除による雄花での蜜報酬の魅力が低下することによる個体内自殖の危険性の低下など、盗蜜を通じた適法訪花行動の変化に起因するものと考えられる。


日本生態学会