| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-156 (Poster presentation)

タナゴ亜科魚類における繁殖寄生と関連した卵形質の遺伝的分化

*林寿樹(福井県大・海洋),北村淳一(三重県博),永野惇(龍谷大・農,JSTさきがけ,京大・生態研セ),手塚あゆみ(龍谷大・農),小北智之(福井県大・海洋)

繁殖寄生を行う動物では,宿主依存的な雌繁殖形質の特殊化が認められることが少なくなく,卵形質の多様化もその産物の一例であると想定される.それでは,このような繁殖寄生種における卵形質の適応的多様化はいったいどのような進化遺伝機構によって達成されているのであろうか.

タナゴ亜科魚類は,イシガイ類やドブガイ類といった淡水二枚貝類に托卵するという特異的な繁殖生態をもち,卵形質や産卵管形質などの雌繁殖形質が産卵母貝種に依存して多様化したことが推察されている.そのなかでもタビラ類は,種内(5亜種間)に宿主と関連した顕著な卵形質の変異が認められ,卵形(長楕円型と短楕円型)や卵サイズに明瞭な亜種間分化が存在することが知られている.タビラ類は,亜種間で妊性のある子孫が作出可能であること,卵形質の進化パターンに種内の反復性が認められることから,繁殖寄生と関連した雌繁殖形質の進化機構にアプローチする格好のモデルである.

本研究では,タビラ類における卵形質変異の進化遺伝基盤を明らかにする第一段階として,長楕円型で大型卵を産卵するキタノアカヒレタビラと短楕円型で小型卵を産卵するアカヒレタビラのF2交雑家系を用いたQTLマッピングを行った.その結果,異なった染色体上に,卵形と卵サイズ変異に関与するそれぞれ独立の QTLを検出することができた. また,これらの領域に,ショウジョウバエで同定されているタビラ類と同様の卵形変異体の原因遺伝子は存在しなかった.


日本生態学会