| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-176 (Poster presentation)

シダ植物種組成類似度に対する空間的自己相関の影響

*松浦亮介(信大・総工), 佐藤利幸(信大・理)

空間的自己相関とはある変数について空間的距離が近いほど類似した値を示す傾向を指す。生物分布を変数とした場合、種ごとに分散能力が限られるため空間的自己相関が認められる場合が多い。それに対し、シダ植物は胞子分散により非常に高い分散能力を持つ。シダ植物種分布と気候傾度の変化が緩やかである水平距離に相関が無い場合、シダ植物の分布は空間的自己相関を示さないという予測ができる。本研究では約40km四方の景観スケールにおいて2地点間におけるシダ植物種構成の類似度と環境傾度・空間的距離との間に解析を行う。

甲府盆地を中心とした2.5kmメッシュ256マスから採集したシダ植物種をデータとして用いた。得られたシダ植物種構成に対して、2地点間の類似性を比較するため全地点間のJaccard指数を求めた。同時に各地点間の緯度・経度間の水平的距離と標高間の垂直距離、そして環境変数としてメッシュ気候値2000に基づいた平均気温差を求めた。この緯度・経度・標高・気温の差を説明変数に、Jaccard指数を目的変数に据え、それぞれの直線回帰と4つの説明変数を用いた重回帰分析を行った。また、説明変数の多重共線性を避けるために相関行列を作成した。

直線回帰の結果ではJaccard指数は全ての説明変数に対して有意な相関を示した。相関行列では緯度・経度間以外は全て有意な相関を示した。また重回帰の結果、Jaccard指数に対して標高と経度に有意な相関が見られた。

直線回帰においては緯度・経度による水平距離も地点間の類似度に影響するように見える。しかし、相関行列の結果から標高や気温との多重共線性により有意差が出てしまった可能性もある。一方で、重回帰では緯度は類似度に対する有意性を示さなかった。以上より、シダ種組成と水平距離の関係において緯度では自己相関はないが、経度では自己相関を示すという結果が得られた。


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