| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-208 (Poster presentation)

人工池における水生昆虫群集:メタ群集の形成過程

*鈴木真裕, 平井規央, 石井 実(大阪府大院・生命・昆虫)

生物群集の構造と多様性は,個々の局所群集の集合からなるメタ群集スケールで評価されることが多い.しかし,局所群集間の異質性が群集形成の過程でどのように引き起こされるかは明らかでない.本研究では人工池の水生昆虫群集を対象に,メタ群集の形成過程における局所群集間の異質性について調べた.

大阪府寝屋川市の水生生物センターにおいて,2013年5,7月に各6個の人工池(プラスチック容器:220 ℓ)を設置した.調査は,2013年8–11月,2014年4–7月,8–11月,2015年4–7月(各Ⅰ–Ⅳ期)に毎月,目合い0.5 mmのハンドネットを用いたすくい採りを行い,種とサイズ階級別に個体数を記録して池に戻した.さらに,各期において池の底質を採取し,その有機物量として強熱減量(AFDM)を求めた.解析は,全調査時点の群集データによるNMDSを行い,その座標値の各次元SDのユークリッド距離を上述の各期で算出し,群集の変動性の指標とした.また,池の設置期間とAFDMが変動性に及ぼす効果について,GLMMによる解析とAICによるモデル選択を行った.

調査の結果,人工池では全体で39種の水生昆虫を確認した.食性と生活型からなる機能群の構成は池または期間により異なったが,12池の合計ではⅠ–Ⅳ期を通じて掘潜底生型の肉食者(掘潜トンボ類)が最優占し,Ⅰ期,Ⅱ期では匍匐底生型の肉食者も優占した(相対優占度>30%).解析の結果,群集の変動性は経時的に高まるが,AFDMが増えるほど低下する傾向がみられた.機能群ごとにみると,AFDMが増えるほど掘潜トンボ類の現存量が増加し,変動性が低下した.また,池の設置時期によって群集間変異の大きさは異なった.以上のことから,群集形成が始まる季節的タイミングは局所群集間の変異の現れかたに影響し,底質の増加量によって個々の群集の変動性が変化すると考えられた.


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