| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-258 (Poster presentation)

小笠原の海鳥は何を食べている?-糞のDNAバーコーディングで探るその素顔-

*小村健人(京都大・農), 安藤温子(国環研), 堀越和夫, 鈴木創(NPO法人小笠原自然文化研究所), 井鷺裕司(京都大・農)

生物多様性ホットスポットである小笠原諸島には、約15種類の海鳥が繁殖しているが、それらが海洋の食物資源をどのように分割して共存しているのかは分かっていない。また、絶滅の危機に瀕する海鳥の域外保全や再導入を行うための手法の確立が必要とされており、そのためには繁殖期における食性を正確に把握する必要がある。しかし、直接観察による食性の調査は困難であり、胃内容物を用いた分析結果も断片的な情報に留まっている。そこで、非侵襲的かつ高解像度な食性解析法である、糞のDNAメタバーコーディングを行うことにより、海鳥の食性を解明することを試みた。

多くのサンプルを集めるために繁殖個体数の多いオナガミズナギドリPuffinus pacificusを対象とし、父島属島の南島において繁殖期前(2015年5月)と育雛期中(2015年9月)に採取したそれぞれ72サンプル、96サンプルからDNAを抽出した。脊椎動物に特異的なmtDNA 12S領域をバーコード領域に設定し、次世代シーケンサーを用いて糞に含まれる塩基配列を解読した。得られた塩基配列をNCBIに登録されているデータベースと照合し、糞中に含まれる脊椎動物の同定を行った。その結果、全体で8目20科の魚類を検出した。さらに、ハダカイワシ科やデメエソ科などの中深層遊泳魚が、繁殖期前と育雛期共に高頻度で検出され、オナガミズナギドリがこれらに強く依存している可能性が示された。また、トビウオ科などは両時期ともに一定割合で検出される一方、マンボウ科やシイラ科は繁殖期前に、ヒメジ科やニシン科、アジ科は育雛期中に検出され、魚類の季節性がオナガミズナギドリの食性に反映されている可能性が示唆された。


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