| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-266 (Poster presentation)

カスミサンショウウオの飼育密度が成長に与える影響の地理的な比較

*増田萌子,宗岡映里伽,中村圭司(岡山理科大,生地)

両生類では、幼生時の生息環境によって成長・発育が影響を受ける。集団飼育の結果から、カスミサンショウウオ幼生ではきょうだいと血縁関係のない個体を見分けることができる可能性があることを、昨年度の本大会で報告した。本研究では、生息地の環境が異なる2個体群間について種内競争下での成長・発育を比較した。また、餌の量が異なる飼育条件下における成長・発育についても比較した。

岡山県真庭市(北緯35.3度、標高540m)と岡山市(北緯34.8度、標高70m)の2箇所でカスミサンショウウオの卵のうを採集し、孵化した幼生を実験室内の15℃一定条件下で飼育した。容量1500mlの飼育容器に、同一卵のうから得られた幼生、または複数卵のうから得られた幼生を10頭入れた。幼生期間を通じて一定量の餌を与える条件と、常に余る程度の十分な量の餌を与える2つの餌条件を設定した。外鰓が消失した時点で体重、体長および頭幅を測定した。

体長と頭幅については、集団飼育より個別飼育の方が大きくなったことから、他個体からの攻撃が成長に悪影響を与えた可能性が示唆された。血縁関係について比較したところ、どちらの個体群においても血縁関係のない幼生同士の方が、体サイズが大きくなった。このことから、親が異なる競争相手の存在下で幼生が積極的に採餌を行い、成長を促進したと考えられる。個体群間で比較したところ、幼生期間は北の個体群の方が短くなった。体重と体長について地理的な違いは認められなかったが、頭幅については、北の個体群の方が大きくなった。餌の量が多いと、変態が短い日数で起き、幼体の体重は重く体長も長くなった。一方、頭幅には条件間で有意差が検出されなかったことから、体の小さい幼生でも大きな餌を食べることができるように、頭部を積極的に成長させることが考えられた。


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