| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-281 (Poster presentation)

ミツバチの採餌行動におけるエネルギー収支

*澤井穂高,岡田龍一,吉田澪,大橋瑞江,木村敏文,池野英利(兵庫県立大・環境人間)

ミツバチは、集団生活を活かし、周囲の環境に適応可能な独自のエネルギー獲得・消費システムを有している。コロニーのエネルギー収支は、コロニーの代謝メカニズムを反映していると考えられ、Seeley は巣重量の変化からコロニーが必要な食物量を求め、そこからミツバチのエネルギー収益率を試算した。その結果、ミツバチが花粉と蜜を集める際の収益率はそれぞれ約8:1と約10:1であったが、この計算においては、花蜜の運搬量を40mg一定とするなど、実際のミツバチ、コロニーの状態を反映していない点がある。そこで本研究では、ミツバチが持ち込むエネルギーと採餌飛行での消費エネルギーを実測し、エネルギー獲得状況の実態と収益率の季節変化を計算する。実験は昨年度及び今年度の2シーズンにおいて行った。巣門において採餌バチを捕獲、持ち込む花蜜と花粉の重量、それらの炭素含有量を計測した。これに加え、コロニーに帰還する採餌バチの数、蜜採餌バチと花粉採餌バチの割合を計測し、これらの値に基づき月毎の炭素収入量を推定した。一方、飛行時に消費する炭素量はWolf らの式により計算し、その結果と採餌バチ数から推定した。これらの結果から炭素収支及び収益率を計算した結果、5月において最大で、それぞれ+1.42kg、約4:1、8月は最小で+0.02kg、約1:1となった。Seeleyの試算に比べて収益率が低くなった要因は、本研究では44%に及ぶ採餌失敗確率を考慮したためと考えられる。コロニーにおけるエネルギー収支は、コロニーの状態や周囲の環境などに強く依存するため、単純に両結果を比較することはできないが、稀にある比較的大量に蜜のある花で十分に報われるという報告もある。今回の結果で、コロニーのより正確なエネルギー収支計算には、より詳しい採餌の実態を捉えた計測の必要があることが示唆された。


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