| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-297 (Poster presentation)

分割可能な餌を運ぶ種の給餌行動~シジュウカラとヤマガラを比較して〜

*石井絢子(九大院・シス生), 粕谷英一(九大・理・生物)

子の餌乞いとそれに対する親の反応は、親子の利益対立のモデルとしてよく研究されてきた。鳥類は多くの種で親による子への給餌が行われる。そのため、給餌研究の対象としてよく用いられてきた。

しかし、これまでの研究は、一度に餌を一つだけ運ぶ、single-prey loaderでしか行われてこなかった。single-prey loaderは「どのヒナに給餌をするか」が重要な問題である。一方で鳥類には、一度に餌を複数運ぶ、multiple-prey loaderが存在する。multiple-prey loaderは、従来考えられてこなかった、「どのヒナにどれだけ給餌をするか」、「一回の訪問で複数のヒナに給餌する際、その順序はどうなるか」といった問題が生じる可能性がある。これらはヒナ間の競争や生存に影響を与える重要な問題だろう。

本研究では、福岡市油山において同所的に生息するシジュウカラ(single-prey loader)とヤマガラ(multiple-prey loader)を対象に、親の給餌行動とヒナの餌乞いを調べた。その結果、ヤマガラでは一回の訪問で複数の餌を持ち帰り、それを複数のヒナに給餌をすることが確認された。これは、シジュウカラのようなsingle-prey loaderには見られないものである。一回の訪問で複数の餌を持ち帰り、複数のヒナに給餌する行動は、ヤマガラのメスの方がオスよりも多く行っており、雌雄で分割回数や分割した際に給餌するヒナの順序も異なっていた。

これらの結果から、multiple-prey loaderのヤマガラの雌雄で、給餌の規則が異なっていることが示唆された。本来、子の価値はどちらの親から見ても等価なので、ヤマガラではつがい外交尾が生じている可能性がある。


日本生態学会