| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-300 (Poster presentation)

野付半島に生息するシカは季節で行動は変わるのか?-定住型個体の季節的行動変化-

*佐藤瑞奈(酪農学園大院・野生動物),石下亜衣紗(別海町観光開発公社),吉田剛司(酪農学園大院・野生動物)

北海道において1980年から1990年代に東部を中心にエゾシカの個体数が増加し植生への影響が報告されている.東部に位置する野付半島においてもエゾシカによる植生被害が報告されている. 2013年から2014年に実施したライトセンサスの結果,3月に最大頭数39頭/km,6月に最低頭数2頭/kmを確認した.野付半島はエゾシカの高密度な越冬地となるため個体数調整が必要とされるが,行動について明らかになっておらず適切な個体数管理のための情報が不足している.そこで本研究では,2014年5月に生体捕獲を実施して,エゾシカのメス成獣4個体にLOTEK社のIridium型GPS首輪を装着し行動追跡を実施した.装着したGPS首輪の位置情報の測位間隔は3時間おきに設定した. 取得した位置情報をもとにa-locohを用いて90%行動圏,50%行動圏を夏期と冬期に区分し算出した.夏期は4月から10月,冬期は11月から3月に区分した.算出した行動圏から夏期は半島先端部を行動圏としており,冬期は基部側の森林を行動圏としていることが明らかとなった.野付半島の先端部は湿地帯であることから人の進入が容易ではなく,ライトセンサスのルート外のため生息数は把握できていない.しかし,夏期に先端部を行動圏としていることから,エゾシカの個体数密度は高い可能性が考えられ,植生へ影響を与えている可能性もあり,植生被害状況の把握も必要である.効果的な個体数管理として夏期の行動圏で捕獲することが適切と考えられるが,野付半島においては捕獲作業が困難なため,冬期の行動圏での捕獲が最も効率が良いと考えられる.


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