| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-413 (Poster presentation)

山火事が植物多様性-リター分解の関係性にもたらす影響

*高木勇輔(横浜国大・理工), 藤井佐織(アムステルダム自由大), 田和佑脩(同志社大・理工), 谷川東子(森林総研・関西), 武田博清(同志社大・理工), 森章(横浜国大・環境情報)

近年,気候変動による植生の変化やレジュームシフトが報告されており,その一要因が山火事である.気候変動は直接的に,山火事は間接的に生態系の種組成と種多様性に影響を及ぼし,大規模な生態系のレジュームシフトを引き起こすことが危惧されている.このようなリスクを予測するには山火事が各生態系プロセスに及ぼす影響を包括的に理解する必要がある.本研究では,物質循環を決定する重要な生態系プロセスであるリター分解を対象とし,植物多様性を考慮して山火事が分解プロセスに及ぼす影響を解析した.

アメリカ合衆国ヨセミテ国立公園内で2014年に発生した山火事地域に非燃焼プロットと燃焼プロットを設置した.tea-bag index (Keuskamp et al. 2013) に基づく分解実験を行い,初期分解速度の指標(k)と炭素貯留潜在性の指標(S)を求めるとともに,各分解機能と植生や土壌環境との関係を解析した.

分解指標であるkSともに,燃焼プロットでは非燃焼プロットより有意に低い値を示した.非燃焼プロットでは各分解指標と植物種数,土壌含水率や無機態窒素量において正の相関を示し,生物的要因による分解の駆動が示唆された.一方,燃焼プロットでは各分解指標と植物種数の関係は見られず,土壌水分との関係はむしろ負の相関を示した.このことから,山火事後の乾燥によって生物的要因による分解が弱まり,熱分解などの非生物的要因による分解が支配的になったと推察された.また,山火事前に存在した植物群集の分解への影響は植生の焼失によってリセットされたことが示唆された.


日本生態学会