| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-418 (Poster presentation)

温暖化はシバ草原における土壌微生物の機能を変化させる―長期的な野外操作実験による検証―

*鈴木真祐子(早稲田大・院・先進理工),吉竹晋平(岐阜大・流圏セ),墨野倉伸彦,田波健太(早稲田大・院・先進理工),友常満利(神戸大・院・農),小泉博(早稲田大・教育)

温暖化が生態系の物質循環に及ぼす影響を正確に評価するためには生態系の主要な構成要素(植物、土壌、土壌微生物)の温暖化応答を包括的かつ長期的に観測することが重要である。中でも微生物は土壌圏の物質循環において主要な役割を果たしており、その機能や活性の変化に注目する必要がある。本研究では冷温帯シバ草原において7年間の野外温暖化操作実験を行い、土壌圏の物質循環が継続的な昇温に対しどのように変化するのかを明らかにすることを目的とした。

赤外線ヒーターを用い、温暖化区の地温が対照区よりも2℃上昇するように制御した実験区を設けた。これらの実験区において、シバの地上部バイオマス、土壌全炭素・窒素量、無機態窒素量、微生物バイオマスを7年間(2009―15年)測定した。また、微生物の機能や活性の指標として、微生物呼吸速度(2013―14年)、群集組成(2014年)、窒素無機化速度(2015年)を測定した。

シバの地上部バイオマスは昇温により増加したが、その影響は2013年以降無くなった。一方、微生物バイオマスは一貫して減少傾向を示した。従って植物と微生物では昇温に対する応答が異なり、さらに植物に関しては長期的な応答が短期的な応答と異なることが示唆された。温暖化区では窒素無機化速度が促進されていた一方で、微生物群集全体の呼吸の指標である微生物呼吸速度は抑制されていた。以上より、温暖化に対する応答は微生物の機能群によって異なり、群集組成の変化を通じて土壌圏の物質循環に大きな影響を与えることが示唆された。


日本生態学会