| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-419 (Poster presentation)

マレーシアパソ保護林における低地熱帯林と湿地熱帯林の選択伐採後の現存量回復

*志摩兼(広島大・総),奥田敏統(広島大・総),Saw Leng Guan(FRIM),山田俊弘(広島大・総)

半島部マレーシアパソ保護林にある低地熱帯林において択伐後のバイオマス回復とそれに与える地形の影響について調査を行った。調査には天然林に設置した50haプロット(天然林プロット)の1985年から2000年に5年おきに行われた毎木調査のデータと、1958年に択伐を受けた森林に設置した6haのプロット(二次林プロット)の1998年から2012年に2年おきに行われた毎木調査のデータを用いた。施業により胸高直径45cm以上のすべての樹木が伐採されている。天然林プロット、二次林プロットともに調査地を丘陵部と湿地部の二つに分け、地形の違いがバイオマス回復に影響を及ぼすのかを明らかにした。天然林・二次林ともにすべての調査年度において湿地部のほうが丘陵部よりもバイオマスが低かった。また、二次林の丘陵部では天然林レベルまでバイオマスが回復している一方、湿地部では二次林のほうが天然林よりずっとバイオマスが低かった。この結果から、湿地部では丘陵部に比べてバイオマス回復が遅いことが示唆された。カーピックら(1997)は、択伐後のバイオマス回復には少なくとも100年は必要であると予測されたが、二次林の丘陵部においては伐採後約40年でバイオマスが回復し、バイオマスが当初言われていたより速く回復したことが明らかとなった。しかし直径60cm以上の大径木が占めるバイオマスは、丘陵部・湿地部どちらにおいても二次林は天然林の直径60cm以上の30~50%しかなく大径木が少ないことが分かった。丘陵部においては、伐採後約40年後にはバイオマスは天然林レベルまで回復していたが、熱帯雨林の構造と機能に大きく貢献している大径木のバイオマスが低いことから、構造や機能に関しては伐採前の状態に戻ったとは言えないだろう。


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