| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-423 (Poster presentation)

暖温帯コナラ林における根圏滲出物の野外測定

新海恒,墨野倉伸彦(早稲田大・院・先進理工),友常満利(神戸大・院・農),小泉博(早稲田大・教育)

植物は根圏滲出物として土壌中へ糖や有機酸などの炭素を滲出させている。森林生態系の炭素収支を正確に評価するために滲出物の定量は重要であるが、野外での研究例は少ない。そこで本研究では、滲出物の野外測定法の開発とその動態を解明することを目的とした。

調査は暖温帯コナラ林で行った。コナラの細根を土壌中から露出させ、バーミキュライトと栄養液で満たした容器 (50、100、200 ml) に入れ、土壌中へ埋め戻した。それを一定期間後 (1、14、28日) に回収し、容器内の炭素量の変化をCNコーダーで測定した。さらに先行研究では容器内の根圏微生物による滲出物の分解は無視されてきたが、本研究では回収後のバーミキュライトからの従属栄養生物呼吸(HR)を考慮することで、より正確な滲出物量を推定した。

野外における測定条件(容器容量、回収期間)を検討したところ、50 mlと200 mlの容器容量では滲出量を過大評価していた。また回収期間は、1日では滲出量を過大評価しており、28日では容器内のほとんどの根が枯死していた。従って、最適な測定条件は容器容量が100 ml、回収期間は2週間と判断された。また、容器内の炭素量の増加に伴い、HRも増加したため、正確な滲出物量の測定には微生物によって分解される滲出物量を考慮することが重要である。従って野外における滲出物量の測定は容器内の炭素変化量にHR量を加算する必要があると判断された。この手法を用いて根圏の滲出炭素量を推定したところ、純一次生産量(NPP)の17 %に相当していた。また、その量は夏季に多く冬季に少ない季節変化を示した。この値は、従来考えられていた割合よりも高く、さらなる野外測定手法の開発の必要性が示唆された。


日本生態学会