| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-424 (Poster presentation)

暖温帯コナラ林の長期管理が炭素循環に及ぼす影響

*山田靖子, 山田理香, 新海恒(早稲田大・院・先進理工), 友常満利(神戸大・院・農)小泉博(早稲田大・教育)

森林生態系は地球規模の炭素循環において重要な役割を果たしているが、その炭素収支は、樹木や下層植生の伐採といった管理によって変化することが知られている。しかし、従来の研究は短期的な管理に関するものが多く、長期的な管理に着目した研究例は少ない。そこで本研究では、長期管理が森林生態系の炭素循環に及ぼす影響を評価することを目的とした。

調査は埼玉県小川町の暖温帯コナラ林において行った。林内において非管理区 (C区) と40年管理区 (M40区) を設け、M40区においては毎年冬季の下草刈りとリターの収奪を行った。それぞれの調査区において樹木の成長量 (ΔB)と枯死量 (LF)を測定し、その和から純一次生産量 (NPP) を算出した。さらにNPPと従属栄養生物呼吸 (HR)の差から生態系純生産量(NEP)を推定した。これらに影響を与える環境要因として、地温や土壌含水率、土壌硬度、微生物量、細根量、無機態窒素量、pHの測定を行った。

ΔBはC区で2.4 t C ha-1 y-1、M40区で3.4 t C ha-1 y-1となり、M40区の方が1.4倍程度高い値を示した。この結果は、管理によって水分や栄養分をめぐる下層植生との競合が軽減されたことによるものであると考えられる。HRはC区で312.9 (20.4 – 1141.4) mg CO2 m-2 h-1、M40区で297.1 (41.7 – 932.9) mg CO2 m-2 h-1となり、C区の方が高い値を示した。以上より、長期管理はΔBを増加させHRを抑制することでNEPを増加させることが示唆された。本発表ではC区とM40区における測定項目の相違点を比較し、それらがNPPやNEPの違いに及ぼす影響について議論する。


日本生態学会