| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-075 (Poster presentation)

日本福祉大学美浜キャンパス周辺のトウカイコモウセンゴケが生育する湿地の水質

*吉田耕治(金城学院大・薬), 水野暁子(日本福祉大・子ども発達), 榎本綾(日本福祉大・企画政策), 川部竜士(日本福祉大・施設), 岡尚男(金城学院大・薬)

日本福祉大学美浜キャンパスは愛知県知多郡美浜町の丘陵地に位置し,標高は約20~30 mである。近年,大学所有地に隣接する湿地状の場所および大学構内の斜面において,東海丘陵要素植物群の一つであるトウカイコモウセンゴケ (Drosera tokaiensis) の生育が確認された。本研究では,新規に確認された生育地の環境を把握することを目的として水質分析を行った。

採水地点は,湿地状の場所にA1~A8,大学構内の斜面にB1,B2の計10ヶ所を設定した。A1,B1地点では塩ビ管を埋設して地下水を採取し,それ以外は表面水を採取し,pH,電気伝導度(EC),溶存イオン濃度を測定した。

A地区の地下水A1ではpHが平均3.6,ECが平均90.0 mS/m で,溶存イオンで最も多量に検出されたのはSO42- であり,その濃度は平均463.0 mg/l であった。B地区の地下水B1ではpHが平均3.5,ECが平均67.7 mS/m,SO42- 濃度が平均300.1 mg/l であった。この2地点ではpH 4.0を超えることはなく,酸性化の主要因は硫酸であることが明らかとなった。同時に高濃度のMg2+,Ca2+ が検出されており,これらによって極めて高いEC値となったと思われる。このように本研究の調査地は,弱酸性・貧栄養を特徴とする伊勢湾周辺地域の湿地の水質とは全く異なることから,トウカイコモウセンゴケは水質に対して広く適応できることが推測された。また,降雨直後はpHが上昇,ECが低下し,無降雨日が連続するとpH が低下,ECが上昇する傾向がみられることもあり,地下に浸透した雨水が地質的な影響を受けて水質が形成されていることが示唆された。


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