| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-077 (Poster presentation)

熱帯林床の光勾配が熱帯植物のサンフレック利用特性におよぼす影響

*冨松元,唐艶鴻

熱帯林床の光環境は、林冠構造の違いによって空間的に不均一である。実生や稚樹は、林内の光強度勾配に沿って形態的・生理的な機能特性を馴化させる。我々は、光勾配に対する葉の馴化特性が動的光合成におよぼす影響に着目し、次の二つの仮説を立て調査を実施した。1)光資源の乏しい弱光環境の個体(葉)ほど、サンフレックス(木漏れ日)利用効率が高い。2)熱帯林内でCO2濃度が高い傾向にあることから、林内の弱光環境ほど光利用効率に対する高CO2の効果が高い。我々はこの2つの仮説を検証するため、熱帯落葉広葉樹林の林床に広く分布するShorea macroptera(フタバキ科)の実生を対象に、光環境勾配に伴う葉の機能特性の変化とガス交換特性を測定した。

その結果、LMA(単位葉面積当たりの葉重)とN含有率は生育光強度の低下にともなって減少し、定常状態での光合成速度(Amax)が低下した。さらに、光照射にともなう光合成上昇(光合成誘導)速度は、弱光環境で生育する個体ほど低下した低下した。この原因のひとつに、光照射前の気孔コンダクタンス(gs-Initial)の低下が考えられた。一方、高CO2に対するgs-Initialの増加割合が弱光環境下ほど大きく、暗環境下ほどCO2増加に対する光合成誘導反応が促進する傾向を示した。結論として、暗い環境ほどgs-Initialが小さく、光合成誘導に要する時間が長くなり、サンフレック利用効率は低下した(仮説1は棄却)。しかし、暗い環境では高CO2等の外的環境因子によって光合成誘導反応速度を上昇させ(仮説2は支持)、炭素獲得効率を上げていることが示唆された。


日本生態学会