| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-095 (Poster presentation)

季節に応じたクマイザサの葉の光合成活性や色素量の変化

*小野清美(北大・低温研)

ササは冷温帯落葉樹林の林床に広く分布する。上層の落葉樹の展葉や落葉により、ササのように林床に生育する常緑植物は光環境の変化にさらされる。光環境の季節変化は林床植物の光合成にとって有利になることもあるが、気温も季節変化するため、低温と強光が組み合わさると光ストレスを引き起こす可能性がある。クマイザサ(Sasa senanensis)の葉は、キサントフィルサイクルの色素量や脱エポキシ化の割合を変えて、このような光ストレスに対して応答しているが、冬季の極度の低温時には積雪により保護され、越冬する(橋口ら2013年日本生態学会)。雪解け後のクマイザサの越冬葉では、雪解け直後の上層木が展葉する前の春先の低温や強光に対し、光化学系Ⅱの最大量子収率(Fv/Fm)が低い値を示し、クロロフィル量あたりのキサントフィルサイクルの色素量が多く、脱エポキシ化の割合が高かった。積雪量や春先の気温、消雪時期は年により異なり、色素等の変化が始まる時期は異なるが、変化の傾向は同じであり、越冬葉は雪解け直前まで積雪により保護されていた(小野2014年植物学会)。このような春先から積雪開始時期までのFv/Fmや色素量の変化は、2014年度、2015年度ともに見られた。クマイザサの当年葉は、上層の落葉樹の展葉が始まる5月には展開し始め、9月には越冬葉よりも高い光合成能力を示す傾向がみられたが、11月には当年葉の光合成能力は低下した。積雪開始時期に雪上に出ていた当年葉においても、葉による結果のばらつきはあるものの、野外の極度の低温ではなく、温度や光などの条件を整えた室内の測定では、光合成を行う能力を保っていた。


日本生態学会